【シリーズ連載01】AI導入より先に整理したい「仕事の流れ」

AIを導入したほうがいいのか
SNSをもっと頑張ったほうがいいのか
Webサイトを新しくしたほうがいいのか
おそらく多くの会社が今、似たようなことを考えているのではないでしょうか。
しかし、その前に一度考えてみたいことがあります。
そもそも自社は、なぜ選ばれているのでしょうか。

AIを入れたのに、なぜ仕事は楽にならないのか?
生成AIを使えば、文章をつくる時間は短くなります。
企画書のたたき台も作れたり、
メールの返信案も考えてくれたり。
情報を整理したり、
アイデアを広げたりすることもできる。
これまで1時間かかっていた作業が、20分になることも珍しくありません。
それなのに「AIを使うようになったけれど、忙しさはそれほど変わっていない」ということがあります。
なぜでしょうか?
ひとつ考えられるのが、速くなったのは「作業」であって、「仕事全体」ではないからです。
仕事は「作る時間」だけでできているわけではない
ひとつの提案書をつくる場面を想像してみます。
AIを使えば、構成を考えたり、文章をまとめたりする時間はかなり短縮できます。
ところが、その前後には別の仕事があります。
必要な情報を探す
担当者に数字を確認する
過去の資料を探す
上司や社長の判断をもらう
修正する
別の担当者にも確認する
お客様へ送る
返答を受けて、再び社内へ共有する
こうして見ると、実際の仕事は「資料をつくる」という一本の作業ではなく、いくつもの小さな仕事がつながってできています。AIが速くできるのは、その中の一部分です。
だから、一部分だけが10倍速くなっても、その先で仕事が3時間止まっていれば、会社全体としてのスピードはそれほど変わりません。
2026年、AIは「入れる」段階から「どう使うか」の段階へ
2026年版中小企業白書では、約3割の中小企業がAI活用に取り組んだと回答しています。
そして興味深いのが、デジタル化の効果です。
ITツールを部門間で連携できている企業では「想定した、あるいは想定を超える効果」を得た割合が高く、連携できていない企業との差が大きくなっています。
また、AI導入は広がっている一方、その用途や成果はまだ「業務効率化・迅速化」が中心で、企業価値の創出やビジネス変革まで発展させることが今後の課題だとも指摘されています。
つまり今は「AIを使っています」だけで、まだ入口。ということなのでしょう。
大切なのは、そのAIを会社の仕事の中にどう組み込むかです。

AIを導入する前に確認したい3つのこと
では、何を整理すればいいのでしょうか。
難しいDXの計画をつくる前に、私たちはまず、次の3つを見るだけでもいいと思っています。
1.「待っている時間」はどこにあるか
まず探したいのは、人が働いている時間ではなく、人が待っている時間です。
社長の確認待ち
担当者からの返信待ち
お客様の情報を社内共有するまでの時間
どこにあるか分からない資料を探している時間
こうした時間は、数字として見えにくいものです。
でも、一つひとつの待ち時間が積み重なると、かなり大きくなります。AIで文章を5分短縮するより、毎回半日止まっている承認を30分にするほうが、大きな改善になることもあります。
AIを導入するときは、「何をAIにやらせるか」だけでなく、「今、何を待っているのか」を見てみると、違う課題が見えてきます。
2.「その人しか分からない仕事」はないか
小さな会社ほど、よくあります。
あの件は○○さんに聞かないと分からない
これは社長しか判断できない
前回どうしたかは担当者のメールを探さないと分からない
もちろん、専門性は必要です。
でも、情報まで人の頭の中に入っている状態になると、仕事は止まりやすくなります。
そしてAIとも相性がよくありません。AIが活用できるのは、ある程度情報が整理されているからです。
会社の考え方
商品の情報
過去の事例
判断基準
よくある質問
仕事の手順
こうしたものが、少しずつでも会社の中に残っていれば、AIも使いやすくなります。
逆に、すべてが「○○さんに聞けば分かる」という状態では、便利なAIがあっても、聞く相手がAIに変わるだけにはなりません。
3.「判断基準」は共有されているか
そして、もうひとつ。
個人的には、ここがかなり大きいと思っています。
仕事が止まる原因は「作業が遅いから」だけではありません。
判断できないから止まる
この対応でいいですか?
どちらのデザインがいいですか?
この金額まで値引きしていいですか?
SNSでこれは発信していいですか?
こういったことを毎回、上司や社長に確認していると、返事が来るまで仕事は止まってしまいます。かといって社員は勝手に判断できないことも多くあります。
この状態は社員が悪いわけでも、上司や社長が悪いわけでもありません。
そもそも、「うちの会社なら、こうする」という基準が共有されていないのです。
ここで、ブランディングの話につながってくる
ブランディングというと
ロゴをつくる
Webサイトをきれいにする
会社案内をつくる
そんな話を想像する方もいるかもしれません。
でも本来は、そのもっと前に、
私たちは何を大切にする会社なのか
誰に、どんな価値を届けるのか
迷ったとき、何を基準に判断するのか
というものがあります。
これが会社の中で整理されていると、社員が判断しやすくなります。
そして外へ向けても、Webサイトや営業資料、SNSに使う言葉や表現、使用する写真と色々なところで、言っていることに統一感が出るようになります。つまり、
会社の内側を整理することと、
外側のブランドを整えることは、
実は別々の話ではありません。

AI時代ほど、「会社の軸」が必要になる
AIは、これからもっと便利になるでしょう。
文章もつくれる
画像もつくれる
企画も考えられる
分析もできる
おそらく今より、ずっと多くの仕事を任せられるようになります。
だからこそ、
AIに何を頼むのか
どの答えを採用するのか
自社らしいのはどちらなのか
など、最後に判断するための「軸」が必要になります。
AIが賢くなればなるほど、会社側が何を大切にしているのかが曖昧なままだと、出てくるものも曖昧になってしまう、そんな時代になっていくように感じています。
まずは「どこで仕事が止まっているか」を見てみる
いきなり大きなDX計画を立てなくてもいいと思います。
まず一週間だけ「今日、何を待っていたか」を見てみる。
誰かの判断だったのか
情報だったのか
資料だったのか
返信だったのか
そこを見つけるだけでも、AIに任せるべき仕事と、人間側で整理すべき仕事が少しずつ分かれてきます。
AIを導入することが目的ではありません。仕事が少しでも進みやすくなり、社員が判断しやすくなり、お客様を待たせる時間が減り、会社として生み出せる価値が増える。
そのためにAIを使う。
順番としては、そのほうが自然なのだと思います。
そして、この話を考えていくと、次にもうひとつ問題が出てきます。
仕事の流れを整理しても、
結局すべて社長のところで止まってしまう。
では「社長がいないと進まない会社」と「社員がある程度、自分たちで判断して動ける会社」、その違いはどこにあるのでしょうか。
次回は、「人手不足の時代に、“社長しかできない仕事”を減らせる会社は強い」というテーマで考えてみます。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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